楠征樹

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《I love...》#7 2026/01/29
(二次創作/原作『ぼっち・ざ・ろっく!』)

「詰まってるの?ひとりちゃん…あら、真っ白」
 頭を抱えるひとりの脇から郁代がヒョイと覗くと、いつもの歌詞ノートは真っ白。
「リョウさんからテーマを言い渡されて…」
「珍しいわね、何?」
「そろそろこういうのも書けないとって」
 言葉で発っする気力が無いのか、ノートの一行目にそれは記された。
「I love、先輩らしくないわね。でも」
 何か狙いがあるのかも、と、郁代は今でも好みだと思っている顔を思い浮かべた。
「嫌、なんですよ」
 ひとりが本当に嫌そうに零した。
「何が?」
「愛してます、って。好きな人から言われたいのは、自分だけじゃないですか」
「そうね」
「愛してますって伝えたいのも、本当に好きな人だけじゃないですか」
「うん」
「だから…それを喜多ちゃんにステージで歌って欲しくないんです」
 ひとりの深い蒼の双眸が、自分を見つめるのを感じて、胸が高鳴るのを感じた。長い付き合いだけど、改めて、お互いの絆の深さを思い知らされる。
「良いじゃない、それ」
「へ?」
 ひとりが顔にハテナを浮かべるのを見て、郁代は微笑んだ。
「だから、私達は、アイラブという言葉や感情を安売りなんかしません!って、歌詞にすれば」
「あ……なるほど」
 ひとりがにやりとした。
「確かにそれならロックです」
「でしょ!じゃあ決まりね」
「はい、ありがとうございます!」
 ひとりが再びノートに向かったその背中に、郁代は声をかけた。
「愛してるわ、ひとりちゃん」
「あっ、はい……あ、わ、私もです!愛してます!」
 久しぶりに調整に失敗したひとりの大声を聞いて、郁代は嬉しそうに後ろから抱きつきながら思った。
 ところで、リョウ先輩は、ちゃんと伊地知先輩に伝えられてるのかしら?どうも、想像出来ないのよね。

1/29/2026, 12:20:38 PM