Nakeyanake

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灰色の世界が、万華鏡を回した瞬間のように色付き始めた。

​隣で語り続ける友人の声は、もう届かない。ただの付き添いで来たはずの僕の視界を、その一枚が暴力的なまでの鮮やかさでジャックしたのだ。キャンバスから溢れ出す赤や青が、止まっていた僕の感情を激しく揺さぶる。世界はこんなにも、うるさいほどの色に満ちていたのか。
​その日はどうやって帰宅したのか、記憶がまったくない。気がつけば部屋でパソコンにかじりつき、狂ったようにその作家の名前を検索していた。画集を買い漁り、展示があれば全国どこへでも追いかけた。

​あの日、あの絵に心を射抜かれた衝撃。
それが、何の興味もなかった僕が学芸員という道を目指すことになった、すべての始まりだった。

5/1/2026, 11:48:33 AM