: 夏
「いやぁ~今日も暑いねぇ~」
そう言いながら、ニカッと笑う太陽の下で
入道雲が、暑さにくじけそうになりながらも
笑顔を返す
「本当に、今日も暑いですね…」
地上では、必死に体を起こす木に
これまた必死にしがみつく蝉の鳴き声が
なんだか痛々しく響いている
道行く人の足元からも熱が立ちのぼり
幻覚を見るように道路が歪む
「入道雲さん、太陽さんに言ってよ
あんまりニカニカ笑わないようにって
笑えば笑うほど、暑くなるからって」
半分溶けかけた友たちの
振り絞る期待の目が
入道雲に向けられる
「わ、わかったよ、言ってみるよ…」
もう少し太陽に近付こうと、もくもくすると
「いやぁ~入道雲さん
今日も元気に、もくってるねぇ~
ぼくももっと見習わなくっちゃ!」
そう言うと、これでもかと笑顔を向ける
限界に達した入道雲が、静かに縮む
「やっぱり、無理だったようだね…」
この夏は…まだまだ…つづく…
桜月夜
7/14/2025, 4:28:50 PM