あの頃の私へ
幼い頃から、まるで家畜の様に扱われ、
人としての生活も送れず、
いつも暑さ寒さや、飢えに苦しみ、
同じ立場の人間が死んでいくのを、
ただ見ていることしか、出来なくて…。
そんな、将来に希望も持てない生活の中。
夜、鉄格子の嵌った窓越しに見える、
満ち欠けする月だけが、
私の心の支えでした。
そんな、牢獄の様な場所から逃げても、
外の世界は、とても冷たくて。
人の悪意を避ける様に、
人里離れた山奥に隠れ住んで。
他人なんて、誰も信用なんて出来ない。
独りで生きるしかないんだと、
泥水を啜り、草の根を齧って生きていて。
夜、穴だらけの荒屋の天井から見える、
満ち欠けする月だけが、
私の生きる証でした。
世の中は理不尽だらけで、
多くの他人は私に悪意を向けますが、
それでも。
こんな私を愛してくれる人もいる事を、
私は漸く、知ったのです。
だから。
そんなに怖がらなくても、
存外、大丈夫ですよ、と。
他人に対して怯えきった、あの頃の私へ、
伝えてあげたいと、
大切な人と、温かい部屋の窓から、
月を見る度に思うのです。
5/24/2024, 6:53:27 PM