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夜明け前の静謐な時間が好きだ。

漆黒、藍色、群青
薄明に至るまでの青のグラデーションも美しい。

それだけでなく

日中とは違う
澄んだ空気も清々しくて気持ちが良い。

そんな特別な時間──夜明け前に起きて、
ひっそり静まり返ったキッチンでお湯を沸かす。
お湯が湧くまでの、のんびりとした時間を静かに味わう。
静けさを味わう極意は耳をすますことだ。
耳をすませば火にかけられたお湯がコポコポ湧く音がキッチンに響いていることに気が付く。
普段取り留めることなく逃してしまっている音というのはきっと多い。

注ぎ口から湯気がたなびきだしたら火を止める。
耐熱ガラスのポットにお気に入りの紅茶の葉を入れ、出来立てのお湯をたっぷりと注ぐ。
ポットの中で茶葉が踊るほど美味しい紅茶へ近づいていく。
待ち時間は3分程。

その時もし、耳が痛くなるほどの静寂に満ちた空間を味わえれば僥倖だ。
夜明け前の世界とは静かなものなのだから。
その贅沢な時間を味わうべきだ。
「世界に自分一人かもしれない」なんて戯言を頭で垂れ流しながら、孤独とは何ぞやと問いかけながら満ちる感覚に時と身を任せる。

静寂ではなく、早起きの鳥の声が聞こえたのならまたそれも良い。
日中に鳴く鳥とはまた違う鳴き声が聞こえることもある。
時が違えば出会えるものが違う、果たしてそれは鳥だけだろうか?

僅か3分間の哲学もどきで身を振り返るのも良いものだと思う。

蒸し終えた紅茶を水筒へ注ぐ。
注ぐときには、湯気とともに漂う芳醇な香りを楽しむ。
今日の紅茶は美味しく出来ただろうか?

お茶の準備が出来たらベランダへ。

小さな椅子に腰掛けて風よけのブランケットを羽織りつつ紅茶をチビチビ飲みながら今日という日の始まりを待つ。


そんな事をいつかしてみたいと思う
そんな妄想だけは捗るのだが…
現実ではいつ叶うだろうか。

天気が快晴と決まっていて、休日で、体の調子が良い時…。
一つは博打としても、2つは意識的に行えば良いものだ。

何時でも叶えられそうなものは
なかなか叶えようとしない。

そろそろ重い腰を上げて叶えましょうか。
いつかいつかで思いも忘れてしまうのは勿体ないから。

9/13/2023, 11:03:18 AM