さやは

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 今年も、衣替えの時期がやってきた。
 もう夏かと思う。この前まで春だったような気もする。
 私の学校には「衣替え移行期間」というのがある。
 その名の通り衣替えをする期間なのだが、その期間中は夏服でも冬服でも着ていいのだ。ただし混ざったような服装はダメ。
 今日は気温が高くなりそうだ。ということで私は夏服を着ていくことにした。
 ワイシャツの上にベストを着る。スカートは冬服より少し生地が薄め。ワイシャツも半袖でいいだろう。
 私は家を出た。少し肌寒いと感じたが、支障はないだろう。



 学校の昇降口で靴を履き替えると、何故かくしゃみが出た。身体が冷えてしまったのだろうか。
 そこへ後ろから、
「風邪引いた?」
と先輩の声がした。
 先輩は何でもできてかっこいい。私の憧れの先輩。部活でも練習に一生懸命で、しかも社交性がある。
 そんな先輩に話しかけられた。
 私は心配をかけたくなくて「風邪なわけないじゃないですかー」と笑って誤魔化す。その直後にまたくしゃみが出た。こんなことになるなら夏服にしなければよかった。
「そんなんじゃ説得力ないんだけど。ほら、これ着ろ。
 寒いんだろ?」
「えっ、」
 私は先輩から、冬服のブレザーを受け取る。借りても良いのだろうか…。
「部活のときに返せよ?それじゃ。」
 先輩はそのまま階段を上がっていってしまった。


 すん、と鼻で嗅ぐ。
 ブレザーからは先輩の匂いが微かにした。
 少しサイズが大きいブレザーを着る。
 ブレザーを貸してくれたときの先輩の優しい顔が頭に浮かんだ。
 胸が少しだけ、大きく脈打った。


【衣替え/2023.10.22】

10/22/2023, 3:55:04 PM