怪々夢

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あなたに届けたい

「ウサギさんはいいなぁ。早く走れて。」

「バカやろう、俺なんか怠け者だし、性格悪いし、短気だし、ロクなもんじゃねぇよ。」

「毛並みもきれいで格好いいよ。ウサギさんのことが好きだって言ってる小動物結構いるよ。」

「いいか?動物は見た目じゃねぇ、中身が大事なんだ。その点お前は真面目だし、粘り強いし、努力家だし、優しいし、俺は・・いいと思うよ。」

「私はダメだよ、いくら努力したって早く走れないし、やっぱりカメってどうしようもないのかなぁ。」

「あー、俺はもう怒った。よし、勝負しよう。あの山の山頂にある俺の家までどっちが早く着けるか勝負しよう。」

「えー、無理だよ。競争なんか。」

「無理じゃない!確かに俺は足が速い、だけど怠け者だから途中で寝てしまうかもしれない。そしてお前は粘り強い。俺が休んでいる間も登り続け、先に山頂に着いてるに違いない。だから俺に勝ったら自分のことを認めろ。努力が無駄なんて言うな。」

「うん、分かった。」

「ただし、俺もわざと負けるつもりはない。俺が勝ったら、なんでも言うことを聞いてもらうからな。」

「言うことって何?」

「俺と一緒に海に行ってもらうとか。」

「なんだぁ、そんなこと、いつでもいいよ。」

「そんなことって、ちゃんと意味分かってるのか?」

「私と海に行きたいんでしょ?」

「そうだよ。」

「私もウサギさんと海に行きたいよ。」

「ダメダメ!そんなこと言ったら。勝ちたいと思う気持ちが弱まるだろ。俺とは海に行きたくないの。だから競走に勝たないといけないの。」

「そんな無茶な。」

こうして俺とカメさんは山頂まで競走することになった。
だけど、大丈夫かな?カメさんにはこの山は急過ぎるかも。俺は木陰に隠れてカメさんの様子を伺うことにした。
あれあれ?カメさんがいないぞ。あっ、スタート地点に戻って来たけど、背中に布団なんか背負ってるぞ。もう、競走なのに布団なんか取りに行ってる場合じゃないだろ。こんなことでは俺が勝っちゃうぞ。海にデートに行ってもらうぞ。

イライラしたので、ふて寝することにした。ちょっと昼寝するつもりだったのに、どうやら何時間も寝入ってしまったらしい。地面に直に寝たので体が痛かった。そろそろ起きるかと思った時、カメさんが俺の体に布団をかけてくれたんだ。

「もう、本当に寝ちゃうんだもん。布団を持って来て良かったよ。ウサギさん、風邪ひかないでね。それじゃ、先に行くね。」

カ、カメさんありがとう。本当に君は優しいね。今すぐ起きてカメさんに感謝の言葉を届けたい。だけど、この状況、寝たふりするしかないじゃん。

1/30/2024, 1:02:06 PM