夫婦は
落ちていく葉の中で、ただ座っていた。
優蔵さんは入院中に百合子さんが編んだニット帽とセーターを身につけている。
こうやって太陽の下で二人ゆっくりするのは久しぶりだ。
今日は体の調子がいいから。と言った百合子さんには、それでもまだ微熱がある。
落ち葉が降る。
降り落ち、積もる落ち葉に、時の流れと蓄積した時間を思う。
そして愛情とは時間じゃないかとも思う。
共に過ごした長い時間が降り積もっていく。
このなんともない、二人ただベンチに座っているだけの時間を終わらせないでほしい。
優蔵は思う。
冬のはじまりを知らせるように、冷たい風がびゅう、と吹いた。
「もしもわたしに何かあっても泣かないで下さいね。」
穏やかな笑顔で百合子が言う。
「ばかだなー。
泣くわけないだろー。」
優蔵は百合子から少し距離をとって涙を拭った。
160作突破記念
「距離」
前回 11/22 150作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。
12/1/2024, 8:40:35 PM