「やるよ。」
ぽい、と投げ渡された、何やら重くて暖かいもの。
顔に直撃したそれを見てみれば、真新しい毛糸のセーターだった。
「セーター?」
「冬服欲しいって言ってたろ。いいやつ買ったから、何年か使えるぞ。」
「……何で急に。」
贈り物をされるようなことをした覚えはないし、彼は何の理由もなしに物をくれるような性格でもない。
もしや何か企んでいるかと睨め付ければ、もごもごと口ごもって顔を逸らした。
「…………だよ。」
「え?何?」
「っ〜、だから!誕生日プレゼント!察せよ!」
「……あぁ!」
すっかり忘れていたが、そういえば今日は自分の誕生日だった。
何やかんやとやる事が多すぎて、頭の中から追い出されてしまっていた。
「覚えててくれたんだ。」
「当たり前だろ。……こ、恋人の、誕生日だし。」
「……照れてる?」
「照れてねぇ!」
耳まで真っ赤になっているのに、照れていないとはこれ如何に。
口は悪いが、初心な青年である。
「くふふ……ありがとう。」
「……どういたしまして。」
貰ったセーターは品がよく、何年でも使えそうだ。
これは、彼の誕生日にとっておきのプレゼントを送らねばなるまい。
一つ、楽しみな予定が増えた。
[セーター]
11/24/2023, 11:23:03 AM