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夏の匂い

私は吸血鬼。夏はだいきらい。
日の時間は長いし、夜になっても暑くて外に出られたもんじゃない。
その上弱っちい人間どもがいつまでもへらへらと我が物顔で道を歩く。
何十年前だったか、ここなら見つからないだろうと優雅に空を飛んでいたら危うく花火というものにぶち当たりそうになったこともある。
突然固まった雨が降るし(私たちは流水で肌が焼けてしまうのだ)、かと思ったら雲の隙間からとんでもない日差しが落ちてくる。
こんな季節が好きな吸血鬼がいるならそれはとんでもない変態だ。

骨董品のラジオが日付の変更を伝える。私は人間どもの使っているカレンダーをめくった。
6月30日が剥がれ落ちた先に、忌々しい7月!
ああ、憂鬱。また夏が来る。

7/1/2025, 2:35:19 PM