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溢れて零れて宙ぶらりんになったままの言葉たちを拾い集めに、来た道を戻る。
まだそこに命の火はともっているだろうか。それともすでに、込められた想いは消え失せてしまっただろうか。

抜け殻のように軽い。けれど確かに灯っていたであろう温もり。指先に残るその感覚だけが、その言葉が生きていた儚い証拠だ。

それを宝物というには幾分滑稽すぎるもので。けれど確かに想いの詰まった大切な塊で。
手のひらに乗せて逡巡する間に幾日幾月が過ぎたのか。私は未だに考え続けている。

それを懐に仕舞うべきか。
それとも手放し捨ててしまうべきか。

手放すことに勇気が必要なものならば、それは本当に手放すべきものなのだろうか。
未練や後悔に苛まれるくらいなら、たとえそれがエゴであろうと決して手放さずに持っていればいいのではないか。

否。
勇気を持って手放した後に残るものが、自分以外の誰かの幸せであるならば、そうすべきなのかもしれない。

そして、私が持っているのはそういうものだ。

エゴだけでここまで歩いてきた。
確かに幸せだった。
あなたもそうであろうと思おうとした。
全ては間違っていた。


カサカサと音を立てる、幸せであったもの。
このままずっと私の手のひらの上で踊って、いつかは風に吹かれて飛んでいくのだろう。

だれか、どうか、幸せの残骸を手放す勇気をください。


『手放す勇気』

5/17/2025, 6:53:44 AM