「こんにちは。今日も綺麗だね」
照れを押し殺して言った褒め言葉に、反応する者はいなかった。暗い空間に虚しく反響する。
街の片隅に、使われていない地下道がある。
元々なんの目的で作られたかは分からない。入り口には『右道』と地下道の名らしき看板が立っている。
右というからには左道があるのかと推理して街中を探してみたりもしたが、結局無駄足に終わった。
街には右道しかなかった。
右。
僕はなぜ右道にここまで執着しているのだろうか。
ただの知的好奇心ーー省略すればこの一言に尽きる。しかし溢れんばかりの“想い”を、たった一言で片づけてしまうのは勿体無い気がした。
そうだなぁ。
「……それと愛、なのかな」
半ば崩れたコンクリートの壁。
そこを懐中電灯で照らすと、右半身の白骨死体が浮かび上がる。おそらく地震や劣化で壁が崩れ、隠れていた彼(あるいは彼女)は露わになったのだろう。
右半身の埋められた地下道。
右道。
ならば左道には左半身があると踏んでいたのだが。
「ごめんよ。君の左半身は見つからなかった」
課題「届かぬ想い」
4/15/2026, 1:11:39 PM