Morita

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一年前に埋めたタイムカプセルを掘り出そう。と誘われた。

一年前?
さすがに早すぎない?
子供ならまだしも、一年前なんかついこの間な気がしてしまう。その割に昨日食べたものが思い出せなかったりして、あるいは十年前の何気ない景色をふと思い出したりして。

「ほんとに一年前のを掘り出すの?」
「うん。ちょうど去年の今日だったんだよ」
「なにしてたの? その時」
「大学サボってソフトクリーム食べた」
「おい」
「あなたは?」
「えー。覚えてない」と、僕は頭を掻く。

長い付き合いになる幼なじみだが、彼女が一年前にそんなものを埋めたという話は聞いていなかった。ソフトクリームを食べてから埋めたのか、埋めた疲れからソフトクリームを食べたのか。

「ここだよ」

彼女につれられてやってきたのは、街中にある小さなライブハウス。雑居ビルの地下一階にあるタイプの。

「ここって、確か」

経営難で閉業した。
そうだ、去年、ちょうどこの日に。

「行こう」

彼女は躊躇なくライブハウスの扉を押した。
鍵は、と声をかける間もなく、扉はすっと開いた。

驚いて目を見開く。

中から音がする。録音ではなく生音の。平成くさい古いロックの音がする。

「はじまるよ」

彼女は振り返り僕に笑いかけた。

【お題:一年前】

5/8/2026, 1:55:54 PM