言葉だけで伝えること。
このぐちゃぐちゃな感情も、
正しいことを強制される思考も、
勝手にかわる体調も、
それらすべてを言葉だけで伝えること。
ひとつ、小さな箱を渡された。手のひらで転がる立方体。角は丸く削られて、四角いのにビー玉のように滑らかさがある。
真っ黒くて、冷たくて、とても小さい。
身体の芯からどろりとした何かが抜け出していく。小さな立方体に引きつけられて混ざっていく。
目にはみえないその様子を静かに観察していた。
古い映画を観ているような不思議な感じがするのだ。きれいではない、物珍しいものをみつけたときのワクワクと少しの恐怖とその他が複雑に絡みついたような感覚。
バチンッ
手のひらから転げ落ちたソレを踏み潰し微笑む顔がこちらをみている。叩かれた手にしびれたような痛みがまとわりついて離れない。
ソレを踏み潰した足が離れたとき、粉々に砕けたものをみつけた。もう二度と元の形には戻らないだろう。
「どうして、」
ねっとりとした微笑みだけがこちらをみていた。
【題:どうして】
1/14/2024, 11:08:33 AM