おもちゃ
お気に入りのおもちゃは、いつだって一番に壊れてしまった。ピンク色の首輪をしたクマのぬいぐるみも、深夜まで叫んだファミリーゲームも、初めて買ったスマートフォンも。
全てが正しく終わっていった。わたが萎み、ソフトがなくなり、バッテリーが劣化した。言い得て妙なもので、それは多分、決められた終わり方だった。
16歳の誕生日、プレゼントはなかった。逃げる様に一人暮らしを始めて数ヶ月、この家の場所は誰にも知らせていなかったし、誰かを呼ぶ予定もなかった。
「お前、無理してないよな? 」
そう言った彼もまた、どこか苦しんでいる様な顔で笑う。
「何だか、悲しげに笑うから」
彼は不思議な男だった。見目は可愛らしい部類に入るのだろう。しかし一度戦場に立てば、忽ち身長よりも大きく重い武器を振り回し、悪魔のような声で笑う。その声は誰よりも伸びやかで、当然のように光を連想させた。だから彼の『ライ』は優しい嘘で、鮮烈な光を見せる。
彼は誠実な男だ。苦しくても立ち上がり、責任を前に走り去ることはない。救える全てを掬い上げて、膝の土を払って『大丈夫だよ』と笑ってくれる。
小柳は、壁に上体を預けて天井を見つめていた。古い壁紙特有の歪み、響く半透明な言い回し。そんな世界で手元の利器は、あっという間にただの鉄板に成り下がる。
「別に、苦しくはないよ」
あの場所から去って仕舞えば、こうして無理に笑顔を作る必要もなくなるのだ。苦しいものを苦しいと、寂しさのままに寂しいと泣きついてしまえる。理屈的には全くもって、一筋の曇りもないはずだった。
2/17/2026, 1:57:50 PM