nameless

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「幸せとは、星が降る夜と眩しい朝が繰り返すようなものじゃなく」
「ん?」

 僕の好きな歌なんだ。続きの歌詞を当ててみてくれない?──そう言って彼は微笑んだ。頬杖をついた彼の瞳はぐずぐずに煮詰められた砂糖菓子を溶かしているかのよう。

「う〜ん、なんやろなぁ」

 うーん、うーん、僕は唸って考え続けた。

「……僕にとっての幸せってなんやろな」

 制限時間はあと三十秒ね。彼は楽しそうな顔でカウントダウンを始めた。

「ほら、早く早く〜」

 二十五、二十四、二十三……

「ごはんをいっぱい食べること」
「ブッブー。違います」

 十九、十八、十七、十六…

「けっ、健康に生きること!!」
「ブー」
「好きな人と暮らす…とか?」
「…ブー」

 十、九、八…

「ずっと笑顔で暮らすこと…?」

 三、二、一、零。

「…多分ブッブー」
「おい自分、多分ってなんやねん」

 僕がそうつっこむと彼はぷは、と息を吐き出して笑った。

「ごめんごめん、実は僕も歌詞忘れちゃって」
「はァ!?何のためのカウントダウンだったんや」
「んふふ」

 文句のつけようもないくらいの満面の笑みで彼は微笑んだ。少し狡そうに、企んだ顔で。

「健康に、笑顔で、好きな人とずうっと暮らせるといーね、〇〇くん」

 その笑顔に何も言い返してやることのできない俺は、頸が熱いことをひしひしと感じながら、照れ隠しに俯くことしか出来なかったのだ。








backnumberさんの『瞬き』という曲が真っ先に思い浮かびました。
私の作品を読んだ方は分かると思うのですか友達以上恋人未満みたいな関係の男性同士のブロマンスがとても好きなのでどうしても思いつきでそんな感じになっちゃいます許してください!!!!
あと今回は私が関西弁が好きなのでエセ関西弁を書きました。

1/4/2024, 2:02:29 PM