「ここは?」
眩しいのか暗いのかよく分からない。前に進んでいるような気がするのだが後ずさりしているような気もする。
僕は何してたんだっけ?
この空間にいるのはいつから?
朝も昼も夜もない。自分の体すらどんな形なのかさえ見えない。
「僕は、、、死んだのか?」
その空間に音も響かない。声に出して言ってみたつもりだがそうではなかったようだ。
普段、何気なく過ごしていることが幸せだった。朝がきて陽の光を浴びて鳥たちが鳴いたりキッチンから聞こえてくる朝食を作る音。昼間、会社で声をかけてくる同僚。夜の疲労困憊でのる電車も。毎日が過ぎ去って行くことも。今はきらきら輝いて思い出される。なにもなくなったら日常すら送ることができない。今までの悩みなんか贅沢だった。
なくならないと分からない、こんな幸せの知り方なんてあっただろうか。ああ、あの鬱陶しがっていた朝食を作る音が聞きたい。邪険に扱っていた同僚に会いたい。疲労困憊になるまで働きたい。
僕はこの空間を漂い続ける。なにかがわかるまで。なにかがひらけるまで。いつになるのか、いつ抜け出せるのか分からない。だだひたすら漂う。海に浮かぶ海藻のように。
12/2/2023, 4:15:35 PM