日月希

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僕は102号室にいる花田さんが気になっている。
一ヶ月前にこの病院に来た女の子。
まだ下の名前もまだ知らない女の子。
肌が綺麗で髪はサラサラ、おまけにいい匂いがする。
僕はそんな花田さんに恋をしている。

今日は思いきって花田さんに話しかけてみた。
想像通りの綺麗な声の女性だった。
下の名前は紗幸と書いて「さゆき」と読むらしい。
彼女に合ったかわいい名前だ。
これからは紗幸さんと呼ぼうかな。

最近、紗幸さんの元気がない気がする
何かあったのかな?
心配だ。

紗幸さんの家族はあまりお見舞いに来ない。
まだ20歳の大学生なのに、あんまりだ。
寂しくないように家族の分も僕が話をしよう。

紗幸さんが病院に来てから二ヶ月、
最近は紗幸さんの方から僕に話しかけてくれる回数が増えた気がする。
この前も僕の病室へ遊びにきてくれた。

紗幸さんの好物は揚げパンだ。
僕が買って行くととても嬉しそうにほほえんでくれる。
でも、丸々一個は紗幸さんには多いのか、いつも僕に半分くれる。

紗幸さんはよく本を読んでる。
僕と話す時以外はほとんどの時間を本を読んで過ごしている。
僕と居る時もよく本の話をする。
今度おすすめの本でも借りてみよう。

紗幸さんをデートに誘ってみた。
紗幸さんは
そうね、明日、もし晴れたらデートにいきましょ。
と、答えてくれた。
明日が待ちきれない

今日は晴れだ。
急いで102号室に向かう。
少し早いかとも思ったが、待てそうも無い。
少し息を整え102号室の扉をノックして中に入る。

しかし、そこに紗幸さんはいない。
看護師さんに紗幸さんの居所を聞いた。
紗幸さんはもういないらしい。
昨日の夜に旅立ったらしい。

僕は信じられなかった。
信じたくなかった。
今日はたまたま家族がお見舞いに来て、出かけてしまっただけ。
そう、それだけであってくれ。

明日、もし晴れたら、きっと紗幸さんはいつもみたいに僕にほほえんでくれる。
そうだ、きっとそうだ。
とにかく、今日はもう寝よう。

今日も晴れだ。
晴れだと言うのに紗幸さんはまだこない。
借りた本は読み終わってしまったし、
揚げパンも全部僕が食べしまった。
だというのに、紗幸さん、花田紗幸には会えない。

8/1/2024, 1:48:03 PM