千冬

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「おにぎり」




今回は少し、お題を貰って考える過程を書こうと思う。




(メモ)

おにぎりというのは、お米を塩など付けた手で握って、海苔を巻いたりして食べる物である。
これが、何とも言えぬ美味しさがある。茶碗に盛った米に塩振って海苔をのせるのとでは全然違うのだ。

不思議な事にその本質はよく分からない。

単純明快に見えて、何処からとも見えない旨みが染み込んでいるのである。

単に考えるのが面倒だというのもあるだろうが。

手間と、見えない所でのその手間の作用が、おにぎりの特別感の本質と言えよう。



似たような物を考えてみよう。

やはり手間というのは一般的に努力だろうか。
だとするなら一般的を避けるのがこだわりであるので、
ここは“不可抗力”と行こう。

強迫観念や個人的なモットーか何かで良いだろう。

例えば…「雨の日に傘をささずに歩く人」。

何が例えばなのか全く以て分からないが、別に構わない。



“雨の日に傘をささずに歩く”とどうなるか。

まず、間違いなく濡れる。
そして涼しい。季節によっては寒い。
風邪をひく可能性がある。
視界が悪い。
パッと見自由だが不自由。

それによって何が起こるか。

髪肌服靴全てが濡れる。
体温が下がる。
涙を隠せる?
風邪をひける。
目に水が入る。
視界がぼやける。

では逆に、“雨の日に傘をさして歩く”とどうなるか。

傘が雨を弾く。
傘が他から自分の姿を隠す。
傘で手が塞がる。
守られているが不便。



(ストーリー)

雨の日に傘をさして歩いていた。
(デートか何かの前でも良い。)
すると、傘をささずに歩いている人がいた。
風邪ひくだろうに、と思ったが、その姿が自由に見えて、綺麗に見えて、傘を閉じてみた。
案の定、濡れるし、寒いし、髪がびしょ濡れになって、滴る水が顔を伝って目に入る。
(その後デートに向かって振られても良い。)
何となく、自由になれた気がした。
前よりは確実に、悪い方に行ったのに。






(本原稿(途中))



 また、一歩踏み出す。水溜まりから跳ねた雨水が、足首を濡らした。
 せっかく綺麗に埃なんかを取って来たのに、雨の日はこれだから。それでも、今水浸しの道路を歩いているのは、紛れも無く、これから喫茶店へデートに行くからだった。僕も彼女も雨は嫌いだったが、お互いの事がそれ以上に好きだったから。窓から見える景色はきっと、紅葉が至る所を緋色に染めている……なんて綺麗なものでは無いだろうが。
 横断歩道の手前で、信号が赤に変わったので立ち止まった。水溜まりを避け、点字ブロックを踏む。片手で携帯を取り出して、時刻を確認し、直ぐにまた仕舞う。約束の時間には到着出来そうな事にホッとしていた。

10/20/2025, 3:46:18 PM