霜月 朔(創作)

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開けないLINE



あいつと喧嘩して、
俺は家を飛び出した。

辛うじて、家から持って出た、
スマートフォン。
LINEのポップアップが表示される。

表示される名前は、
さっき、喧嘩したばかりの、
あいつの名前。

あいつからのメッセージが、
気にならないわけじゃない。
だが。
既読を付けたくなかった。

開けないLINE。
くだらない意地を張ってるだけだと、
頭では、分かっている。
だが。
あいつに負けるのは、
何だか、悔しかった。

また、LINEの通知、だ。
ポップアップに表示される、
メッセージの一部。
あいつが俺を心配してるのが、
伝わってくる。

それでも、開けないLINE。
喧嘩したばかりなのに、
あいつが、俺の事を、
心配してくれているのが、
何だか、嬉しくて。

あいつの好きな、
チョコレートケーキを買って、
家に帰ろう。
鳴り止まない、
あいつからのLINEの通知を見て、
…そう思った。

だが。もう少しだけ。
あいつが俺を、
心配してくれている、
この優越感に浸っていたいんだ。

9/1/2024, 5:59:26 PM