いぐあな

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真夜中の帰り道。300字小説。



『真夜中の0時に角を曲がるとどこかに連れていかれる』
 私が子供のとき、そんな噂があった。よくあるご町内七不思議だと思っていたが……。

 駅を出て、早足で家に向かう。
「ついてきてる……」
 終電に乗り合わせた知らない男が私の後ろをずっと歩いている。
 スマホの時計は午後十一時五十九分。まけるか解らないが、いつもと違う角を曲がる。
「うわぁ!」
 私について曲がった男の影が突然、悲鳴と共に消えた。
『久しぶりに引っかかったな』
 耳慣れない声が耳元で囁く。
『アレは儂等が貰っておく。アンタはお家にお帰り』
『若い娘が遅くまで出歩いておったらいかんぞ』
 ケタケタと笑う声と共に
「ここはどこだ!!」
 叫ぶ男の声が夜の静寂に消えていった。

お題「真夜中」

5/17/2023, 11:58:18 AM