寒さが身に染みる頃、
残された喪失感と確かにここにあったなあという記憶の感覚だけが頭の中で流れる。
温もりを何度思い出そうとしても、同じ温もりが再度体に染みる事はない。
大学からの帰り道、2人でバスに揺られる。
君と出会ったのは同じ大学からの帰りのバス停で話した事がきっかけ。最初の会話は「あ、落ちましたよ」君がマフラーを落とした事に僕が気づいて、そこから話すようになって、なんだかんだ一緒に過ごす時間が多くなって。いつしか「恋人」になっていた。
運命とかそういうの僕は信じないけど、
君は「運命だね!」なんて嬉しそうに話していたね。
僕にはない、そういう所に惹かれたんだった。
「「37.2」この数字がなんだかわかる?」
真面目な顔してこっちを見ながら聞く君
「なんだろ、微熱?」
少し笑って冗談ぽく答える僕
「そうだけど!違うよ」
笑いながら返す君
「これはね、人が愛し合う時の温度」
「愛に温度があるなんてロマンチックだよねぇ」
少しこちらに視線を送ったあと窓から外の流れる景色を見る君。
「へえ、物知りだね。愛の温度か。」
答える僕。
そう話してくれた君の横顔があの頃よりやけに大人ぽく見えた。
この時の僕たちの温度は何度だったんだろう。
少しして君から
「もうおしまいにしよっか。」
と切なく優しい笑顔で伝えられた。
「わかった。」
としか返せなかった僕。
「なんで、どうして」と泣いて伝えたかった。
僕にはそれが出来なかった。
1人になってからグーを握りしめて泣く事しか出来なかった。
呆気なくさせてしまった。
こういう所だろうな。
君がくれる温度全て僕のたからものだった。
いつからか少しずつズレていた温度は、君によって支えられていたんだね。
今更もう。今ではもう。
後悔ばかりが膨らんで。
あの時の会話もっと膨らませろよ。なんて自責の念に駆られる。
同じ季節がきて、同じ風景が流れる。
寒さが身に染みても、もう温もりはいない。
1/11/2026, 5:38:15 PM