よしだ

Open App

彼女はどこか浮世離れしていて
半分透けてるんじゃないか、なんて
思うくらい静かで気配が薄いのに、
そこに確かに居たと、
その影だけがずっと残っている。

いつの間にかそこにいて
外国のひとだったから
何を言っても伝わらなかったし、
彼女が何を思っているのかも
幼いぼくにはさっぱり分からなかった。

だけど居なくなってから
ふと思い出すたびに
彼女は本当の本当に
そとのくにのひとだったんじゃないかと、
そう思うのだ。

日光を羽衣のようにまとう
黄金の毛並み。
それがよく似合うのに、
でもその羽衣は貴女のものではないのだ。

どこでもない場所に
静かな視線を向ける貴女は
宇宙人か、それとも異界のひとか、

そういう妄想をする。
貴女が土の下に埋まった
ずっとあとに。

その時、脳裏に浮かぶ貴女は
レースのカーテン越しに見るように朧気で、
だけど光にあてられて
濃い影を残している。

そんな姿だけが、
ぼくの記憶に残っている。


「特別な存在」

3/23/2024, 3:37:27 PM