『君の目を見つめると』
「私の目を見なさい」
ククク、この者の命は今、我が手中に握られている。
生かすも殺すも私の自由。
悪役令嬢は獲物の黒くつぶらな瞳を見つめた。
「さあ、とっとと白状なさい!この盗っ人!
私のお芋ケーキを食べたのはお前ですわね?!」
腕の中にいる標的のぶよぶよとした
脂肪をつまみながら尋問する悪役令嬢
私が楽しみに取っておいたお芋ケーキ。
お気に入りのテラスでセバスチャンが淹れてくれた
紅茶と一緒に味わおうと思っていたのに!
少し目を離した隙に、テーブルの上に置かれた
お芋ケーキは忽然と姿を消していたのだ。
そう、犯人はコイツ。
ふてぶてしいフォルムに何を考えているのか
わからないぽけーっとした表情
こいつの正体はマーモット。
庭に植えている野菜や果物を
食い荒らしていく極悪人(獣)ですわ!
海よりも深く寛大な心を持つこの私が
目を瞑ってやっていたにも関わらず、
この者は私のお気に入りを奪うという大罪を犯した。
これは生かしてはおけません。
「おほほほほ!セバスチャン?今日の夕食は
マーモットの丸焼きと行きましょうか?
マーモット鍋でも良いですわね~」
小動物相手に怒りの業火を燃やす悪役令嬢を
セバスチャンは暖かい目で見守っていた。
4/6/2024, 9:50:28 PM