わをん

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『お気に入り』

星を渡る船の中でずっと彼女のことを考えていた。彼女の好きだった花。彼女の好きだった菓子。彼女の好きだった歌。船の向かう先にそれらは存在しない。
何気なく首元へと手をやったが、いつも身につけていた首飾りは彼女に贈ったのだった。未練が残ってしまいそうだったから彼女からは何も受け取らなかったというのに、心はずっとあの星に置き去りになっている。
彼女のお気に入りの歌を口ずさむ。彼女の声が重なって聞こえた気がした。

2/18/2024, 1:06:26 AM