月に2〜3度、いつもより30分ほど早く家を出て、学校とは真逆の方向にマウンテンバイクを走らせる。
いつもの曲がり角に着くと、呼吸を整えて時を待つ。
いつもの時間に通り過ぎていく貴女を、一生懸命に追いかけて声をかける。
「おはよう」
貴女も笑顔で「おはよう」って答えてくれる。
その後、誰も聞いていないのに、言い訳をするんだ。
「いやぁ、親の仕事都合でたまにこっちから学校に行くんだよね」
同じ言い訳を何度しただろうか。
きっと貴女は気付いている。
この言い訳が嘘であることを。
そうだよ、僕は嘘をついてでも貴女に会いたいんだよ。
ここから学校までの30分間、僕は朝の柔らかな光を浴びてひときわ輝く貴女の顔を独り占めしながら自転車を走らせる。
〜柔らかな光〜
10/16/2022, 12:29:07 PM