れいおう

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『あなたに届けたい忘れ物』

最近バスケ部から帰宅部に部活をかえた俺の友達は家に帰ってから勉強した後スマホをいじり寝落ちするというのを日課にしているらしい。彼いわく
「スマホはご褒美だよ、スマホをいじるために勉強するんだ」
ということだった。勉強がスマホをいじるためにやるものになっているのは大丈夫なのだろうかという心配はあったが、決めたことになにか言うことはない。
ある日の部活終わり、友達が家に帰ってから二時間後、俺が教室に戻るとその友達の机の上になにかが置いてあるのが目に入った。なんだろうかとよくよく見るとそれはその友達が愛用しているスマホだった。俺は咄嗟にこれはやばいのではないかと思い立った。スマホをいじるために勉強しているという友達がスマホがない状態で勉強を終わらせたらどうなるのか結果は目に見えている。そう、スマホをいじろうにもいじれず禁断症状が出てしまい、不健康な生活を送ってしまうことになるのだ。
俺はそれを阻止しようと思い立った。
この忘れ物のスマホをあなたに届けたいと。
そう思い立った俺はその友達の家へ向かって走り始めた。いつも二時間くらい勉強しているはずのその友達はもうそろそろスマホをいじろうとするはずだ。その友達の家は俺の家とは反対側にあるがそんなことは気にしてられない。俺はとにかく急いだ。どのくらい走っただろうか、たぶん二十分くらい走っただろう。友達の家がだんだんと近づいてきた。そして遂にその友達の家の目の前に着いた。俺は意を決してチャイムを押す。ピンポーンと音が聞こえ、ドアが開いた。
ドアが開くとそこに立っていたのは、なんだかやつれて目が血走ってる様子の友達だった。まさか禁断症状かと思った俺は間に合わなかったかという思いと同時に、早く止めないとと考え、
「あのさ…
と話し始めようとした。すると
「俺のスマホ知らないか?!」
と話を遮り興奮した様子でその友達が話してきた。
「勉強終わってスマホいじろうとしたらどこにもなくて、探してて…」
と焦りが見えるほどの喋り方で捲し立ててくる。俺はその友達に対して落ち着かせようと持ってきたスマホを取り出し見せる。すると
「あっ俺のスマホだ。まさか教室とかにあったの?ありがとめっちゃ助かったわ」
と急に落ち着きを取り戻し、スマホを大事そうに握りながら家の中に戻っていった。きっと彼はこのあとスマホを寝るまでいじるのだろう。
バタンと閉まったドアを見守りながら俺は
「あなたにしかと届けたぜその忘れ物」
とかっこよく呟く。
俺の心にはやり切ったぜという達成感が広がった。
しかしそれと同時に友達に対してこんな事も届けたいとそう思った。
「禁断症状が出るってことはもしかして、スマホ依存症だったのか」
という言葉を。

1/30/2024, 10:05:28 PM