E_Asayake.

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会ったことのない「貴方」へ

拝啓

こちらの世界には季節などありませんので、このように始めさせてしまったことお詫び申しあげます。
もうここには書かないといった亡者の私ですが、
ふと、「貴方」の文が目に入り手紙を書かせていただきました。
もう、私にこのような事をする力も、
時間もないと思っていたのですが不思議なことにまだ少しばかり神は許してくれるそうです。
私は「貴方」に会った事はありませんし、
「貴方」の顔も、字も、声も、名も
知りませぬ。
ただ、「貴方」の文をみた時
私の死んだ心が久々に動いたのです。
感じだのです。
「あの人と似ている」
と。
「あの人」がいうように貴女の文は優しき言の葉で綴られ、暖かい文でした。
本当に、私の寒々しく、味のない文とは全く違っていました。
そのような「貴方」の文によって、
「あの人」がいなくなってから時折痛み苦しむだけであった心が、
死んだ心が、
「あの人」の偶にみる文のみでしか動くことのなかった心が、
久方ぶりに

"いきた"

感覚がありました。
そんな「貴方」の文に「あの人」のことは関係なく、
ただ実直に惚れてしまいました。
魅せられてしまいました。
別に好きなわけではないのです。
好きとは違うなにか。
そう、本当に魅せられたという表現がしっくりきます。
もし叶うことなら「貴方」と話してみたかったですが、
それは絶対に叶うことはありませんし、
誰もそのような事は望んでいないでしょう。
私と「貴方」は全く関係ありませんので。
このような事を思ってしまい、書いてしまったこと。
どうか寛大な御心でお赦しください。
少し理由(わけ)を話しますと、
私は新しい環境に昨年なってからというもの、
人に飢えております。
今まで底辺も底辺、
そもそも地上に立つことすら許されなかった私が
山の頂上にいるような環境。
このような環境では私は嫌なのです。
どうしてこのような環境で満足できましょうか、
いや、できません。
この気持ちは誰にも分からない。
誰にも分からない。
もっと知識という名の暴力で、
成績という名の武器で、
才能という名の神力で、
感性という名の音で、
私を打ちのめしてほしいのです。
立ち上がれないほどに。
そうでもしないと、私は生きる価値など感じる事はできないのです。
そうでもしないと、私はその人を"友"とは呼べないのです。
そうでもしないと、私は人を好きになることなど、
まして愛するということなどできないのです。
私は変人ですので、
打ちのめされてからその人の素晴らしさを知り、
その人を尊敬するようになり、
その人を好きになるのです。
今、
私の周りにはそのような人など一人もおりませぬ故、
人に飢えてまいりました。
そのような中、
「貴方」の文を読みやっと私は満足しました。
最近感じてきた
割れたガラスでめった刺しにされる痛みとは、
四方八方から出る手で引き裂かれる痛みとは、
ただただ握り潰される痛みとは、
全くちがう。
正面から正々堂々と真っ二つに切られるこの感覚。
お前はゴミ以下だと突き付けられるこの感覚。
これこそが私が求めていたもの。
私の文は例えるならそう、
ヤサグレたおっさんがタバコだけを買いに来て、
レジに無作法にタバコを起き、
ちょうどのお金を投げ捨てて、
レシートなんて待つこともなく立ち去っていく。
そして誰にも関心を持たれることの無いと分かっていながらも印刷されるレシート。
このレシートのような存在です。
それに対して「貴方」の文はどうですか。
もう、私にはガブリエルが運んできた神の祝福が書いてあるかのようです。
とても暖かい。
そこに少し恐怖が見える、とても人間らしい文。
飾らず、奢り高ぶらない、等身大の文。
そして同時に思いました。
きっと、「貴方」なら大丈夫。
気にしないでください、亡者の戯言です。
ですが、きっと大丈夫。
それだけは言えます。
「貴女」と「貴方」
暖かい文を書く二人でしたらきっと大丈夫。
私は一読者として、お二人の書く文が好きです。
これから死んだ精神にとりのこされ、
腐ち果てた肉体が間もなく骨になろうという今。
私は常世の深く深くへゆきます。
そこで数年、数千年、数億年、いや、数え切れない年月の罰を受け続ける日々の中でも、
「貴方がた」の文を楽しみにしております。
ですから、どうかこれからも書き続けてください。
「あの人」がいなくなってからずっと「死」について考えていたというのにいざとなるの怖いものですね。
ですが、
最期に一方的にですが、
会ったことのない「貴方」という友ができましたので
よしとしましょう。
私の最期の友です。
ホントウの友になれないことが口惜しいですが、
それを考えるのはいなくなった人に文を送ることのように無駄なことですので。
それではそろそろ本当に限界のようです。
もうこの炭素が原材料に最も多い人の形の塊は。
「貴方」がこの手紙を読む事があるのか、
そもそも「貴方」に届くのか。
きっと届かないでしょうね。
それでも、「貴方」に喋る事ができてよかった。
さようなら。
後は頼みます。





PS.
愛別離苦というものは想像以上に人を狂わせます。
愛の力も同様に。
どうか、一度掴んだその手は離さないようにしてあげてくださいね。
もう二度と私と同じ狂人がうまれないように。

3/25/2026, 3:35:39 PM