Ryu

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何が起きたのか、分からなかった。
突然、自分の名前を連呼されて、目を覚ます。
急に吐き気に襲われて、目の前がグルンと回ったかと思うと、何人もの医師や看護師に囲まれていることに気付いた。

ゆっくりと状況を理解する。
手術が終わったのか。
ついさっき、映画のワンシーンのような慌ただしい手術室に運び込まれて、次々と質問をされて答えていたはずだが、気付いたらすべてが終わっていた。

全身麻酔のせいで、時間の経過が不条理だ。
この、小1時間ほどの間に、自分の体に穴が開けられて、中の悪いものを取り出されたとは、にわかに信じられない。
さっきまでと何が違う?
…いや、この痛みは無かったな。
お腹に痛みがやってくる。鋭い痛みだ。
通り魔に刺されたらこんな感じなのか?なんてネガティブイメージに襲われながら、ストレッチャーで病室へと運ばれる。

朦朧とする意識の中、ベッドの上。
夜にかけて、半睡状態が続く。
眠ろうにも痛みが強くて、完全に寝入ることが出来ない。
ベッドの周りにたくさん人がいるような、その人達が自分を見下ろして何かをつぶやいているような、感覚。
目を開ければ、薄暗い病室には誰もいない。
ベッドの隣りにある窓の外には、ゴジラサイズのリラックマが歩いていた。

いつの間にか眠りに落ちて、朝が来て、看護師さんに起こされる。
窓の外の街並はいつも通りだった。
リラックマは建物を避けて歩いていったらしい。
痛みもかなり薄らいで、今日は歩けたし、食事もとることが出来た。
もう大丈夫。あとはのんびり、療養生活だ。

ただ、昨夜見た、あのベッドの周りにいた人達。
何となく、今夜も来るような気がしてならない。
今思えば、あの人達は白衣じゃなかったな。
自分と同じようなパジャマを着て、悲しそうに何かをつぶやいていたような…まあ、気のせいだろうけど。

3/19/2024, 5:10:29 AM