山崎沙耶は死んだのだ。
雲一つない空にポツンと月が浮かんでいる。
目の前の泉はその月を水面に映している。
艶のある長い黒髪。スラリとしたやせ気味の体型。
彼女は僕に向かって微笑んだまま、言葉を発しなかった。
綺麗なはずなのに、どこか現実味のない月の光が、舞台照明のように彼女の姿を照らしていた。
あり得ない。
あの日、通学中に走っていくパトカーと救急車を見た。現実であるはずがない。
夜の森特有の湿った匂いがする。静けさのせいか、葉の揺れる音が妙に大きく感じる。
夏特有の絡みつくような湿った暑さの中、額に汗が滲む。
だけど僕は知っている。だってずっと彼女を見ていたのだから。
彼女であるということを否定できない。否定したくなかった。
だって彼女は、
山崎沙耶は死んだのだ__
お題:君を照らす月
11/16/2025, 1:06:03 PM