すべて物語のつもりです

Open App

「とりとめもない話、してもいい?」
 とりとめもない話ならば、そんな前提はいらないんじゃないかと思った。無言を肯定と受け取ったらしい彼女は、言葉を続けた。
「私達が生きられているのは奇跡が連続してるからなんだなって最近気づいたの」
 つまらない動画をスクロールしていくだけの指が止まった。
「私達の傍にはいつだって死があるの。それなのに私達が生きていられるのは、奇跡がたまたま、当たり前のように続いてくれているからなの。そのことに気付いて、私、もっと生きたくなっちゃった。いつかは死んでしまうのなら、今死ぬのは勿体ないなって思えるようになったの」
 何も言わないことが正解だった。本音を言えば、彼女の声のトーンは明らかに下がるだろうし、彼女の言葉に驚くあまり、作り笑顔に思ってもいない言葉を重ねる余裕はなかった。
「ねえ、一緒に生きたいな、この先も」
 何に毒されてしまったのだろう、いつものように考えすぎておかしくなってしまったのか。わからないけれど。
 彼女のその傷でさえも、彼女が与えられた奇跡の証明になるのだろうか。

12/17/2024, 11:00:50 AM