鶴づれ

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七夕


 友人と連れ立って電車を降りると、駅の改札をすぐ出たところに、七夕の笹が飾ってあるのが見えた。

「もう七夕かぁ。早いね」
 定期券で改札を出て、友人が笹に吊るされている短冊をすくって見せる。
「ほんとだよ〜!ついこの間、高校生になったばっかりな気がするのに…。でもせっかくだし、短冊、書いていこうよ」
「あんた…、またお金持ちになりたいとか書くくせに」
「バレた?」
「これで何年目だと思ってんのさ。いい?願い事は、機織りが上手な織姫にあやかって、芸事の上達を願うのがいいんだから」
「分かってるけどさぁ」
 
 芸事が上達しても、彼には会えないんだよ。

 遊園地で迷子になって泣いていた私を助けてくれた彼は、大企業の御曹司だから。
 彼に会うには、私も同じくらいセレブにならないと。

 駅の黄色の短冊には、今年も「お金持ちになれますように」と書いた。

7/7/2023, 12:27:47 PM