『ところにより雨』
天気予報のキャスターが、少し申し訳なさそうな笑顔でスクリーンを指差した。画面にはまだらな雲のマークと、ぽつりぽつりと配置された小さな傘のアイコン。「今日の午後は、ところにより雨となるでしょう」という落ち着いた声が、静寂の落ちた部屋に響く。
窓の向こうを見上げると、街を覆う空は淡い灰色に染まり、遠くの輪郭をぼんやりと滲ませていた。けれども、分厚い雲の切れ間からは、頼りないけれど確かな光の筋がいくつか地上へと降り注いでいる。街全体が一様に濡れているわけではない。不意の冷たい滴に見舞われている場所もあれば、柔らかな光に包まれている場所もあるのだ。
そうやって世界が不規則に明暗を分かつ中、ふと自分自身の内側に目を向けてみる。
心に雨が降っていた。
輪郭のない鬱屈としたしずくが、静かに内側を濡らしている。しかし、あの空模様がそうであるように、この心の雨もきっと「ところにより」なのだろう。心のすべてがすっかり冷え切ってしまったわけではない。コーヒーを入れたお気に入りのマグカップに灯る温もりや、微かに聞こえる遠くの生活音に安心を覚えるだけの、小さな陽だまりは私の端っこにちゃんと残っている。
局地的な雨が通り過ぎた後には、よく澄んだ空気が満ちる。濡れた心もそのままにしておけば、やがてどこかで小さな虹を描くかもしれない。通り雨が静かに去りゆくのを待つように、今はただ、自分の中の晴れている部分をそっと抱きしめながら過ごそうと思う。
3/24/2026, 2:30:44 PM