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「此処を発つよ」
そういった君の瞳が酷く透明で、言いかけた言葉は音になることなくとけた。
「どうしても、行くの?」
震えた声の問いかけに君は、ひとつ、頷いた。
「どこか、誰も僕を知らないような、そんな場所を目指して、そこを終の住処にする」
静かな声だった。
朝に霞むような、夜に溶けるような、そんな声だった。
「………そう。」
ふう、と知らず詰めていた息を吐く。
命の終わりを探しに行くのなら、もう、止められない。
心の言葉に蓋をして、そっと笑う。
「それならもう、行ってらっしゃいは必要ないか。」
行ってきます、行ってらっしゃい、おかえり、ただいま。
ずっと繰り返したその言葉をこれから先、君に言うことはない。
「うん。じゃあ、行くね」
「うん。元気でね。」
そう言って歩いた君は昇る朝日に溶けた。
行かないで、なんて言葉は言えないまま、君の陰を見つめてた。

10/25/2024, 1:18:03 AM