『私の日記帳』
家に誰もいない夏休み。家に誰もいなくて退屈だから、家族の部屋に少しぐらい立ち入って、少しぐらい秘密がないか調べるのも許されるだろう。
そうして親の部屋から見つけた一冊のくたびれたノートは文房具屋や百均でも見るような昔からどこにでもあるようなものだった。家計簿や何かの使い差しのものだろうとなんの気なしに開いてみたところ、それはどうやら日記帳だった。
小さな頃、兄におやつを勝手に食べられて泣かされたことが文字の読み書きも知らないはずの私の文字で書き記してある。小学生の頃、初恋かもしれないときめきの様子が小学生には知りえない言い回しを使って詩的に書き記してある。書いた覚えのない日記に記されていることは私の頭にすべて記憶されていることだった。読んだページすべてがそうだったから、この先に続くページもそうなのだろう。恐ろしくなった私は震える手で日記帳を閉じて元の場所に戻し、そして今日のことを誰にも話さずに忘れることにした。
8/27/2024, 4:22:15 AM