黄身

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大事にしたいものをちいさな腕に抱えて歩いてきた。何よりも大事に、一生懸命に持っていただけなのに、ガラス細工やむっつのあの子のこころみたいに大事にしていただけなのに、いつのまにか心臓から離れなくなってしまった。
脂肪や繊維の癒着した腕は醜悪で、きっと誰もが顔を顰めるようなかたちをしている。
わたしのだいじだいじ。
わたしだけの、わたしのとくべつ。
どうしてそんな顔をする。どうしてそんなにわたしを睨む。わたしは、わたしだけの大切はそんな顔でわたしを見たりしないはずで、あのこはずっときれいで、やさしくて、わたしだけをみていて、
だからこれはあのこじゃなかった。わたしのたいせつがこんなにみにくいわけがない。
それなら壊して、隠してしまおう。見せないように、見つからないように。
大事だいじなわたしのたいせつ。あのこはずっと、ずっと、ずっとずうっと、わたしだけのたいせつでいればいい。

No.19【大事にしたい】

9/21/2024, 10:30:26 AM