路傍の礫

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 『その瞳は』

 
 その瞳は悲哀で満ちて冷たく儚く、
 そして何よりも綺麗だった。
 
 その瞳は一つだけ、薄ぼんやりとした、夕焼け色。
 
 その瞳の持ち主は、命を持たぬ、鉄の塊。
 
 血に濡れた――殺戮兵器。

 その瞳が見据えるのは、私。
 
 その瞳が、ひどく揺らめいた。
 
 銃口が私の額に当てられる。

 死などもはやどうでもいい。
 
 その瞳がひどく悲しくて、かなしくて――

 赤く染まったそのからだを、
 訳も分からず抱きしめた。

 あとは散々泣き喚いた、
 何度も何度も
「ごめんね」
「ごめんね」
 ってひたすらに。

 どうしたらいいのか――分からなかった。

 
 額にあった銃口は
 いつの間にか
 私の背にそっと添えられていて
 それは、とても、とても暖かかった――。

4/6/2024, 4:55:38 PM