John Doe(短編小説)

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歯車


ギギギギギ
 ゴゴゴゴゴ
ガガガガガ
 ギギギギギ
ゴゴゴゴゴ
 ガガガガガ

絶えず歯車の噛み合う音が響く、真っ暗な空間をひとり、わたしは歩いていた。
足元は無限の血だまりがあり、その上を靴で歩く度にぴちゃぴちゃと嫌な音がする。
歯車はわたしの頭の上で、いや、ドーム状の丸い世界の天井をびっしりと埋め尽くすように、歯車は噛み合っては回転していた。
わたしはおかしくなったのだろうか。
それとも、世界がおかしくなったのだろうか。

そもそも、この歯車の意味が分からない。
もちろん、地面を満たす血だまりの意味も。

ギギギギギ
 ゴゴゴゴゴ
ガガガガガ
 ギギギギギ
ゴゴゴゴゴ
 ガガガガガ

ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ

僅かな震動、僅かな反響、僅かな色彩。

尚も、わたしは歩き続けるしかなかった。

例え、狂っていたとしても。

そうすること以外にすることが特になかった。

立ち止まれば、わたしは今に発狂してしまうんじゃないかと恐ろしくて仕方がなかった。

ギギギギギ
 ゴゴゴゴゴ
ガガガガガ
 ギギギギギ
ゴゴゴゴゴ
 ガガガガガ…

ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ…

ぴちゃり。

クス。

クスクス
クスクスクスクス
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクス
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクス
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクス…

10/24/2023, 6:09:21 AM