『待ってて』
毎日、何を作り、何を食べるか。その苦悩は夢にまで現れる。
朝4時30分、不慣れな手つきで、砂糖多めの卵焼きと冷凍シャケをフライパンで焼く。本当にバタバタと調理するから、シャケと卵焼きの両方が黒く焦げている。弁当箱に早めに詰めておいた白米の上に焦げ面を下にして乗せ、少しでも見栄えよくなればと、シャケの角度を微調整する。高校生には野菜を食べさせないといけないと頭に強くあるため、安く買える小松菜で定番のお浸しを作るが、息子にはいつも「ほうれん草の方が好きなんだけど」と不評だ。うちはうちだからと力なく答える。
なんとか出来上がった決して見た目の良くない弁当に、ふりかけと個包装のドーナツを添え、「弁当忘れるなよ。今日も頑張っていこう。」と、いい親だと思われたい気持ちを込め、威勢よく声をかける。
俺も息子も朝ごはんは食べない。
俺は、朝ごはんを食べると、仕事中に頭と胃が重く感じる。息子は、朝食べると吐き気がするそうだ。
この生活習慣は正さないといけないとは思いつつ、お互い様であり、注意できる者が誰も居ない。
職場での昼休憩、俺は自家用車で弁当を食べる。人に気を遣いながら過ごすなんて、何の休みにもならないし、何よりこの弁当を見られたくない気持ちがある。昨年離婚したばかりで、高校生の息子と2人暮らしを始めた四十男は、職場の人たちの好奇の目に晒されている。弁当について評価なんぞされては堪らない。
就業時刻まで残り15分を切っている。最近の癖で、この時間になると、夕食の献立を考え始める。
高校三年生の3学期、専門学校が早々に決まっている息子は俺より早く自宅に帰ってきている。最近は洗濯や洗い物を積極的に済ませてくれているから助かるが、料理には消極的だ。
タイムカードを押し、職場の人に無意識に挨拶をしながら、夕飯になにを作るか考える。
カバンの中から車のキーがなかなか見つからず、手を突っ込みゴソゴソとかき混ぜながら、夕飯になにを作るか考える。
スーパーで、買い物かごに卵、小松菜を入れながら、夕飯になにを作るか考える。
考えて、考えて、考え抜く、、、
閃いた!
急いで息子に電話し、「今晩はカツカレーにするから、待ってて。」と威勢よく告げる!
頭はスッキリだ。
2/13/2026, 1:17:48 PM