脳内の細胞たちが記憶の頼りにしていた灯りが一つ消えるたびその記憶には辿り着けなくなる。
大切なあの人のことも。
大切な思い出たちも。
自分の名前すら。
でもあるときなにかのきっかけで火花が散ってふっと記憶が鮮明に蘇ってくることがある。
身体は覚えている。刻まれている。
記憶は無くなってはいないのだ。
たしかにそこにある。
たとえ灰になったとしても。
形が変わっただけでなくなりはしないのだ。
ときどき巡りくる記憶にどっぷり浸かりたい。
自分だけにしかない大切な記憶の中で大切な人に会いにいきたい。苦い記憶もあるがそうすることで自分を守り生かしてきたのだろう。
あなたが私を忘れても私があなたを思い出します。
私の中に誰かの記憶のランタンがあるように
誰かの中にも私についてのランタンがあるのだろう。
せっかく思い出してもらったときにどうせなら誰かをやさしく照らすランタンでありたい。
なかなか現実はうまくはいかないが、そうありたい。
「記憶のランタン」
11/18/2025, 3:53:16 PM