300字小説
見知らぬ駅
平日の駅。案内板の観光ポスターに遠くの街に行きたくなって、Suicaの残高をつぎ込んで切符を買う。途中、乗り換え駅のホームを間違えて迷い、やってきた無人の電車に乗った。
終点の駅名板のみの、白いホームに佇む。360度、見渡す限り青い海。遠くで大きな蛤が口を開けて虹を吐いた。
人のざわめきに我に返ると私は帰宅の学生で混む、夕刻の電車に乗っていた。かたとん、かたとん、線路の音が聞こえるなか、耳元で
『無事、現世に連れて帰られて良かった。気を付けろよ』
聞き覚えのある優しい声が聞こえる。
「……お父さん……」
心配して側についていてくれた。夕日が見慣れた景色を赤く染める。
「……明日はちゃんと学校に行こうかな」
お題「遠くの街へ」
2/28/2024, 11:53:57 AM