流行り病の時にマスクをしていた時期、給食の時にマスクを外し、初めて素顔を知った衝撃にそれは似ていた。
「……ほっそ!!!」
俺はこの春彼女ができた。
しかし、彼女のことは何も知っていなかったようだ。
本日は初デート。
今日の気温は30度を超えると天気予報で聞いていた。
「いつもは日焼けしたくないから、アームカバーとか上に羽織ったりするけど……日傘あるから暑いし半袖にしてみたんだ」
彼女は黒い日傘をさしたまま、笑いながらそう言った。
半袖から見える二の腕は、程よくぷにっとしているようだが、肘から指先にかけては、俺の手で掴めそうな程に細い。
こんなに細くて生きていけるのかと心配する程の衝撃であった。
「それよりデート、ちゃんとエスコートしてよね?」
半袖姿の彼女は、はにかみながら俺の横にピタリとくっついてきた。
彼女が近付いてきたからか、はたまた気温が高いからなのか、俺もなんだか暑くなってきた。
「俺も半袖なのに……あちぃなぁ、今日!」
「そうだねー。ほら、私の日傘に入って、相合傘しよう?」
「いや日傘で相合傘は狭いよ!」
「あはは、そっかー」
初々しいデートのスタートである。
【半袖】
7/25/2025, 11:23:29 AM