「この世界へさよならを言う前に、辞世の句でも読めると思った?
残念、大間違いだよ。走馬灯を見る隙すらあげない」
右足。
「最期を悟った後に時間をもらえるなんて考え自体贅沢だなぁ。自分がいつ死ぬかなんてわからないし、突然終わることの方が圧倒的に多いでしょ、ぼくらみたいなのの場合」
左足。
「そんなに遺したいことがあるんなら、遺書でも書いておかなくちゃ。…何度も書くのは面倒だけどねえ」
右手。
「終わりが見えて、始めて浮かぶ言葉があったとしても。誰にも何も伝えられない。それが後悔ってやつだよ。
それが嫌なら毎回覚悟を決めておかないと」
左手。
「だから、さよならを言う前に、こんな風にダラダラ話したり、いろんなものをもらってゆるされるのは、いつだって勝者だけなの」
少年はニコリと笑って、
「ほらね、さよなら」
心臓を奪った。
「あああああああ私のピカチュウううううう!!!!でも椋さまの勝ち誇った顔かわいいいいい」
「ふふん、ぼくのカービィに敵うものはないってことだねっ!次勝てば、ぼくのお願い聞いてもらうからぁ…ぼくのケーキが待ってる!」
「この、キャラランダム&正座&コントローラー握っちゃいけない&サイレント縛りがなければ…椋さまにあんなお洋服やこんな衣装を着てもらえるのに…っ!」
「だってつぐみちゃんが縛りプレイでもしないと相手にならないでしょ?初心者のぼくが」
「あの、正座で足しんでるからちょっと休憩を…」
「はーい最後のラウンドいきまぁす!」
「ドSの椋さまもいいな…新しい扉開きそう…」
「わーつぐみきもちわるいー。…こんな感じぃ?」
「ヴッ心臓奪われた」
暫定勝者の椋は、無視して容赦なくAボタンを押した。
【さよならを言う前に】
8/21/2024, 4:15:33 AM