眠り子

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記憶

私は、間違っていたのだろうか。
魔法学生時代に家族との過去で苦しむ同級生と話したことが最初だった。
彼の苦しみをなくしたい、どうすればいいのだろうと。
だから、記憶を回収し削除する魔法の研究を始めたのだ。人々から辛くて悲しい記憶がなくなれば、心穏やかに生きていけると思っていたのだ。

だが、現実は甘くなかった。
最初こそ、感謝されていたものの、記憶がなくなったことで今度は周囲との話が噛み合わなくなり、人間関係の軋轢が生じた者がいたのだ。
「なんでうちの子の記憶を消したの⁉︎」
記憶を消した人間の家族に詰められたこともあった。
すれ違いによって関係が拗れていたところだったのだ。
こんなことは望んでいなかった。

そんなある日、魔法警察に私は捕らえられた。
一緒に暮らしていた女性は戸惑っていた。
彼女は私が助けた最後の人間だった。
「悪いのは全部私だ。その人間は悪くない。私の実験台になってもらうために連れてきたのさ。」
彼女を庇い、全ての業を背負うことにした。
「君だけは逃げるんだ…!」
逃した女性には、転移魔法と共に私と過ごした日々を忘れる呪いをかけた。こんなやつのことなど忘れて幸せになってほしいと。

囚われた牢の最奥で、かつての日々を思い出す。
私が人間たちを救おうとした手段は、エゴでしかなかったのだろうか。もう答えはわからない。

3/25/2025, 11:30:49 AM