"忘れられない、いつまでも。"
あの頃より、幻聴幻覚は減った。夢に見る事も減った。だいぶ減った。
『減った』のだ。完全には消えていない。
今でもたまに見るし、聞こえる。
長い長い年月を経てようやく耐性がついて、取り乱したり過呼吸を起こしたりしなくなった。
幻覚、幻聴、悪夢は《あの日の記憶》と《あの日以前の記憶》をまざまざと叩きつけてくる。
そんなものが無くたって、忘れるわけが無い。
《あの記憶》を忘れたくない。
忘れてはいけない。
忘れるなど許されない。
無関係の人間に生まれ変わっても、この記憶は忘れてはならない。
俺の贖罪で、俺を縛る十字架で、俺を生かしているもので、俺の運命。
それが無くなったら、俺が俺じゃなくなる。
だから、何度でも戦いに赴く。
どんなに僅かでも可能性があるなら、何度でもかざす。手を伸ばし続ける。
俺のできる事を精一杯。この身が滅ぼうともやり遂げる。
俺のような思いを、何人《なんぴと》もさせない為に。皆のあるべき未来を取り戻す為に。
5/9/2024, 1:59:54 PM