いぐあな

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オカルト
300字小説

終着電車

「……飲んだぁ~」
 飲み会帰り。私は何とか終電前に駅のホームに着いた。
 酔った身体に夜風が気持ちいい。ふらふらと待っていると一両編成の古びた電車がホームに入ってきた。
「あれ?」
 こんな電車、この駅で見たっけ?
 車両に乗ろうと歩き出す。そのとき、足の前を艶やかな毛並みの感触が遮った。
『行かないで』
 引き止めるように毛並みはくるりくるりと両足の周りを回る。
 電車が出発する。一両だけの電車はホームを出た後、ふっと虚空に消えた。

「……何? 今の……」
『にゃあ』
 三年前に亡くなった飼い猫の声が聞こえる。あの子は私の足にじゃれつくのが好きだった。
 また毛並みが触れる。
『にゃあ』
 満足げな声がホームの闇の向こうに去っていった。

お題「行かないで」

10/24/2023, 12:11:04 PM