「 どこにも書けないこと 」
『あぁ、嘆かわしい……!
今どきの若い子は積極性もなければ、
個人としての表現が非常に乏しい。
私が若い頃は、SNSっていうものがあって、
そこではいろんな人がいろんなことを考え、文にし、
毎日何千何万もの「つぶやき」や「投稿」が
行われていたのに。
私もよくテーマパークに行っては踊った動画をあげたり、
感動したらストーリーやショートにしてみたり、
店員への文句は140字にまとめて簡素につぶやいたり、
今思うと楽しい時代だったんだけどなぁ。
最近じゃ「令和はレトロ」なんて言われてるけど、
今の世の中よりも良かった気がする。
こんな気持ちになったのに、
どこにも書けない事も嘆かわしいわ。
こんなこと書いたりでもしたら、
処罰の対象だろうからね…
あぁ、あの自由に満ちた時代が、
また帰ってこないかなぁ。 』
「これは…」
私は亡くなった祖母の日記から目が離せなくなった。
所々掠れや破けがあり読みづらいところもあるが、
内容が分からないほどではない。
祖母の生きた時代を感じ、同時に羨ましさが込み上げる。
「自由に満ちた時代か…」
私が生きている時代も、
いつかは良かったと心から思えるのだろうか。
今現在では、到底そうは思えない。
私はこの大切な祖母の生きた証を、
しっかりとカバンへ詰めて、地下を後にした。
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2/7/2023, 6:18:53 PM