『みかん』
こたつの中でぬくぬくとしている中で、甘いみかんを食べる瞬間が好きだ。ああ、俗っぽいなんて言わないで。確かに私は俗っぽい人だけれど、それで得られる幸せは俗っぽくなんてないの。
こたつの上に置いてあるペンを手に取る。キュッと音を立てながら、みかんに顔を描いていく。
「ね、どう?」
隣で寝ていた彼を起こして、彼の顔を描いたみかんを見せた。彼は寝ぼけたままで言う。
「ぶさいく」
「あなたを描いたんだけど」
「じゃあいけめん」
そして、のそのそとこたつから上半身を出して、彼も同じようにペンを手に取った。真剣な顔つき。私はそれを見られるだけでも満足だった。
「これ、おまえ」
「……意外と似てる」
「まあね、───」
お前のことはよく見てるから。
……いけない、暑くなってきた。そうだ、外に出よう。みかんでも買ってこようか。
12/29/2024, 1:19:43 PM