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僕の恋人は男だ。そして僕も男だ。
初めて2人で旅行に行った日の事だった。
「どうして僕の告白を受けてくれたの?」
「あははっそれは君がホモだから?」
香水を纏って甘い香り漂う男だった。
「だって今までの恋人は全員女だった」
「...もしさ、僕らのどちらかが女で男でも君を愛していたよ」
「ただ君という存在を愛しているんだ。例え女でも、顔が今と全く違う感じでもさ、愛してる。ただそれだけで十分だと僕は感じるんだ。みんなみんな何かと枠にハマりたがるけど、元々愛なんて曖昧なものに枠なんて僕は感じないよ?んーなんだろう。説明はしにくいんだけど君もたまたま愛した人が男だっただけなんじゃないかな。だからこの先別れても君は1人の元恋人に過ぎない。」
「そういうものなのかな」
プレゼントでくれた香水はレモンの香りがした。
「この匂いを選んだのは、僕らの恋の証。香水って凄く恋と似てるんだ。同じ恋なんてひとつもない。ただ形のないものに名前をつけただけの似たものどうしの感情。匂いも同じものなんてひとつも無いけど同じレモンの匂いって書かれてる。恋も匂いも、信じた証が結婚したりいい匂いになれる。」
今はもう女の人と結婚して子供もいる。彼女の香水はシャンプーの香りがする。
私は妻を愛しているし、もう男は好きじゃない。いや違った、もう元恋人達は好きじゃない。
未だにあの香水を嗅ぐとあの頃に戻った感覚になる。
「なぁいつか結婚したいな」
「僕達の気持ちは僕達にしか分からないよ。似てる気持ちをもっている人はいても同じ気持ちを持っている人なんて1人もいないんだから。理解じゃなくて学んでくれるといいな」
いまだに覚えているあの匂い。愛の匂いもきっとそれぞれ違うのだろう。

8/30/2024, 8:56:50 PM