「友達……友達ねぇ。友達なんて要るか?」
「いきなり何言ってんだよ」
俺の友人は例によって例のごとく、唐突にそう切り出した。昼休みの駄弁り開始の合図だ。
「いやな、リアルの友人は俺だって大切だよ? けどさ、ソシャゲの友達ってどうなん?」
「あー……」
確かに友達って言葉を最近一番聞くのってソシャゲかもしれない。
「あいつらに友情を感じることなんてある?」
「ゲーム内で助けてもらった時とか?」
「まぁ、うん。そっち方面はね。そうかもね。けどさ、助ける側もメリットあるから助けてるだけだよね? それって本当に友情って言える?」
嫌なところを突くなぁ。
「それってお互い様じゃね?」
「物は言いようだね。見返り前提の友情って、俺的には抵抗あるよ」
——友情は見返りを求めない、だっけか。コイツはそんな言葉が好きだった、気がする。
「ってか、ソシャゲごときに友情を語ってほしくないね」
コイツはまた問題発言を……そこで本当に友情を築いてる人もいるだろうに。
「あんなもん、俺から言わせれば友達じゃなくて人質だよ。プレイヤーを辞めさせないための、ね」
人質。それは確かに言い得て妙かもしれない。
「引退しようとしているプレイヤーを引き止めるには、人質に『お願い、見捨てないで』って言わせるのが一番手っ取り早い。それが——上辺だけでも、友達の言葉だったら尚更効果覿面だろうね」
「そうかなぁ……」
「それでも辞める人は辞めるだろうけどね。その場合は、もう誰にも止められなかった、ってだけの話さ」
「そんなもんかな?」
「そうとも」
などと、特に実りのない会話をダラダラとしていたら予鈴が鳴った。
「あ、予鈴。そろそろ席戻るわ」
「おー」
気のない返事をした友人は窓の外に目を向けながら、
「実際、俺も君に止められなかったらとっくに退学してたよ……こんなくだらない学校」
そう、小さく呟いた。
10/26/2024, 9:03:28 AM